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「日経不動産マーケット情報(2013年2月号)」当社記事
(2013.01.25)
日経不動産マーケット情報 2013年2月号に弊社代表 梅小路学の寄稿記事『不動産ファンドの雇用情勢』が掲載されました。

『市況停滞からようやく脱しつつある不動産市場。倒産や撤退で参加者が大幅に減少した不動産ファンド業界だが、徐々に新たな人材を採用し始めた。今、業界に必要とされているのはどのような人材なのか。不動産ファンド業界に特化した転職支援会社MUCを率いる梅小路学代表が、リーマンショック後の環境変化に揺れた不動産ファンド運用会社の雇用動向を解説する』(日経不動産マーケット情報ホームページより引用)
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/books/nfm/20130117/599155/

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トピックス 不動産ファンドの雇用情勢

「若手には転職の好機到来 問われる意思疎通力と語学力」

市況停滞からようやく脱しつつある不動産市場。倒産や撤退で参加者が大幅に減少した不動産ファンド業界も、徐々に新たな人材を採用し始めた。

今、業界に必要とされているのはどのような人材なのか。不動産ファンド業界に特化した転職支援会社MUCを率いる梅小路学代表が、不動産ファンド業界の雇用動向を解説する。

リーマンショックから丸4年が経過し、不動産ファンド業界もずいぶん様変わりした。

1997年ごろからリスクマネーとして日本に上陸し、不動産投資マーケットを席巻した(オポチュニスティック系)外資系ファンド運用会社は、すっかり影を潜め、特に欧州金融危機の影響が深刻な欧州勢は軒並み撤退もしくはそれに近い開店休業の状況にある。

米系の多くも大規模なリストラは一巡し、組織としての体裁は保っているものの、預かり資産残高の減少に伴い人員を減らしている。今まで長年外資系ファンド運用会社をけん引してきたトップマネジメントの交代も、リーマンショック以降頻繁に起きている。

リーマンショック以降も外資系ファンド運用会社が新規ファンド組成を成功したという話は、意外と多く耳にする。

しかしながら、その多くの新規ファンドが背負うIRR(内部収益率)20%以上という大きな期待利回りに応えられるような物件への投資機会は、全くと言っていいほどなく、「お金はあるけど投資機会がない」という歯がゆい状況が継続している。

『高い給与が転職の足かせに』

そうこうしている現在も余剰となった従業員は、日々リストラの対象となり会社から去ることを強いられている。

外資系ファンド運用会社を退職した場合、別の外資系で次の仕事がすぐ見つかることは少なく、多くの場合は転職先を確保するのに苦労する。

理由の一つは給与の問題だ。ファンドバブル時代の外資系ファンド運用会社では、若手でも年1000万円以上、インセンティブを含めると場合によって2000万円以上報酬をもらっているケースも珍しくなかった(別項参照)。

規模は縮小しているとはいえ、今でも外資系の給与水準は高い。しかしこの高い給与水準が、一旦外資系の枠を外れて日系ファンド運用会社への転職を考える際に足かせとなる。

現在の日系ファンド運用会社の報酬は、日系メーカー並みもしくはそれよりも少し良いという程度に過ぎない。

本人が生活水準を落とさなければならないという問題に加え、日系企業は一度でも高い報酬レベルを経験している人材の採用にしり込みしがちである。

外資系特有の個人主義、成果主義のやり方を経験した人が、年功序列を重んじる日系のカルチャーになじむのかという危惧を持たれる場合もある。

そういった採用側の懸念を払拭できるかどうかが、日系ファンド運用会社への転職の鍵となる。

『不動産ファンド運用会社の給与体系』

従来給与は、基本給+諸手当+賞与という構成が一般的だが、ファンド運用会社では外資・日系を問わず、年棒+インセンティブという給与体系が多く取り入れられた。

インセンティブは、業績に応じて年棒と同額程度まで支払われ、中には年棒を大きく上回るインセンティブが支払われることもあった。

例えばアクイジション職(30歳)で年収1500万円(年棒750万円、インセンティブ750万円)、同じくアクイジション職(32歳)で年収2400万円(年棒1000万円、インセンティブ1400万円)といった具合である。

リーマンショック以降、インセンティブはほとんど支払われず業界全体の給与水準はかなり下がった。

日系では従来型の給与体系に戻すところもでてきている。

『シニア層の転職は狭き門』

最近の求人は若手に集中する傾向にある。リーマンショック以降、新卒採用はもちろんのこと、業界外から若手の中途採用をほとんど行っていないという背景に起因する。

積極的に人材を採用した2004年~2007年の4年間、各社は即戦力性を求め30代前半から半ばの人材を多く他業界から招いた。

それから数年が経ち、不動産金融業界の人材のボリュームゾーンが30代半ばから40歳前後に上昇してしまった。

そのため年齢構成を少しでも改善しようと「とにかく若手を採用したい」というニーズがREITを中心に日系ファンド運用会社に広がっている。

30歳前後、望むべくは20代半ばから後半というのが主な採用ターゲットとなっている。

そういう意味では30歳前後以下の若手には、今まで入りたくても入れなかった大手日系ファンド運用会社への転職を考えるにはよい時期である。

しかしながら現実には、若手の転職希望者は絶対数が少なく、日系ファンド運用会社各社は非常に採用に苦戦を強いられている。

非常に厳しい転職環境であるにもかかわらず、複数の内定を手にし、転職先選定に悩む優秀な若手の存在は実は珍しいことではない。

若手層の転職活動があまり活発ではない背景にはいくつか理由が考えられる。

まず一つは、新卒等多くの若手を抱えていた日系ファンド運用会社の大型倒産が一巡し、転職活動を何が何でもしなければならないという状況ではないということ。

そして、不動産ファンドバブルから一転リーマンショックというマーケットのダイナミズムを実体験した若手が、転職する度にステップアップをするという安易な発想から、今いる会社でしっかりとスキルを磨き、資格取得等の自己啓発に地道に取り組もうという風に意識を大きく変化させている現実がある。

また不動産取引が低迷する今のマーケットで転職活動をしてもどうせよい転職先があるとは考えにくく、しかもどういう会社が今後自分にとってよい会社となりうるのかイメージが湧きにくいという現状のマーケットの停滞感も大きく影響しており、であればつぶれない限り当面今の会社で頑張ってみようという気持ちに若手の多くがなっているという側面もあると分析される。

他業界からのポテンシャル採用を試みる企業も出てきているが、成果は芳しくない。リーマンショック以降、ファンド運用会社は、業界外の若者にとって魅力が薄れてしまった感がある。

一旦失った業界の信用を取り戻し、優秀な若者を外部から招き入れるには、まだまだ時間と実績の蓄積が必要である。

一方ボリュームゾーン以上の年齢になってくると思うような転職は難しくなっている。

特にシニア層の求人は極めて少ないという現実がある。

その最大の原因は、ファンドの新規組成が少なく、仮に新規組成ができたとしても、投資実績を積むことができないために新設部署の創設が少なくマネジャーのニーズが出てこないことがあげられる。

よってシニア層の求人はほとんどが欠員補充案件である。既存の出来上がった組織のマネジャー、部門長というのは、既存メンバーとの年齢・スキル・経験のバランスもさることながら、人物としての相性も重要視されるため、結果、シニア層の転職はかなり狭き門となっている。

もちろん今後市場が好転し、ファンドの新規組成が増えてくるに従って、シニア層の求人も回復してくるものと期待される。

『重視されるコミュニケーションスキル』

近年、不動産ファンドで最も求められる職種はアセットマネジャーである。各社により職種の定義が多少違うが、主に期中管理をする優秀なアセットマネジャーが広く求められている。

不動産ファンドバブル全盛の頃は、アクイジション(仕入)担当者が花形であり、高い報酬をもって厚遇され、アセットマネジャーはそれに劣後する存在であった。

というのも不動産ファンドバブル時代は、物件を仕入れさえすれば、時の経過ともに物件の価格が上昇し、各社は濡れ手で粟のキャピタルゲインをあげ、アクイジション担当者がインセンティブとしてその果実を享受した。

アセットマネジャーの期中管理の業務内容も当時は現在とは随分様子が違った。うなぎ上りの賃料、空室は簡単なリノベーションをすれば簡単に埋まり、それをバリューアップだと投資家に説明した。

また保有期間が短いために物件を一度も見ることもなく転売というケースも珍しくなかった。

経営者は、アセットマネジャーは誰がやってもうまくいく仕事と考え、優秀な人材をアクイジションへ配置した。

当時はとにかく「買う」ことが最優先された。

しかし、リーマンショック以降はマーケットが反転した。

マーケットに買いたい価格の物件が存在せず、アクイジションは誰がやっても同じ、とにかく買うことができない。

ファンド運用会社各社の優先課題は「買う」ことから、保有する不動産のパフォーマンスを高めていかに投資家の信頼を繋ぎ止めるか、レンダーと交渉していかに有利な条件を引き出すか、つまり「期中管理」へとシフトした。

アセットマネジャーには、PM、BM等の外部ベンダー、投資家、レンダーと良好な関係を構築できる非常に高いレベルのコミュニケーション能力が求められるようになった。

優秀なアクイジション担当者は押しなべてコミュニケーション能力が高いため、アセットマネジャーへと配置転換し活躍しているケースも多い。

アセットマネジャーの採用面接でも、学歴、所属企業のブランド、過去の実績だけでは通用せず、面接官と良好な関係を構築できるコミュニケーション能力を備えていなければ思うような転職は難しい状況だ。

『クロスボーダー取引に対応』

全面的に低迷する外資系ファンド運用会社の中では、香港系、シンガポール系が前向きな姿勢を崩していない。

現在厳しい市況であることには香港系、シンガポール系にとっても変わりがないが、不動産投資ポートフォリオのあり方・考え方の違いからか欧米系と比較するとリーマンショック後も継続的に投資を続けている。

雇用の受け皿としてはまだ小規模だが、各社積極的な採用姿勢をみせている。

レポーティングラインが外国人の場合は、採用にビジネスレベルの英語力が求められ、徐々に訪れつつあるクロスボーダー時代の転職活動にはやはり英語力が必要となることを予感させる。

昨今、外資系に限らず日系ファンド運用会社でも、業務上の英語ニーズは日に日に高まっている。

新たなインバウンド投資(外国人投資家の日本不動産への投資)、アウトバウンド投資(日本人投資家の海外不動産への投資)に備え、バイリンガルの人材を確保するという動きが日系ファンド運用会社で活発化している。

某大手不動産会社系ファンド運用会社、某大手商社系ファンド運用会社では、海外投資家対応要員としてバイリンガル人材の採用活動を継続的に行っている。

帰国子女でなくても自己啓発でTOEIC900点以上のレベルにある人材には、業務経験はさほどでなくてもワンランク上の会社に転職できるチャンスが巡ってきている。

『加熱する物流不動産投資市場 専門家の不足で新規採用はままならず』

物流ファンド運用会社は、上場REIT、私募を問わず堅調である。2012年11月28日には大和ハウス投資法人が物流施設と商業施設に投資する複合型REITとして、2012年12月24日には、グローバル・ロジスティック・プロパティーが物流特化型REITとして上場し、ともに初値が発行価格を上回った。

物流ブームに乗り急速に残高を増やし続けてきた物流ファンド各社だが、現在三つの問題に直面している。

第一に、そもそも物流は過去大手物流・倉庫会社が牛耳ってきた非常にクローズドなマーケットであったためにそれを担う専門家の絶対数が少ないことが挙げられる。

不動産ファンドバブル時代さながらに、物流ファンド運用会社各社は通年で様々な職種を募集しているが思うように採用が進んでいない。

外資系不動産サービスプロバイダーが物流関連の人員の削減をすれば、瞬く間に物流ファンド運用会社各社に吸収されるといった具合である。

第二に、物流ファンドビジネスの急激な勃興により、投資対象となる良質な物流施設が不足し、資金は集まるが投資ができないというマーケット需給のアンバランスがあげられる。

各物流不動産ファンドは物件の仕入れに苦戦を強いられ、優秀な物流施設のアクイジション担当者を渇望しているものの、採用は思うように進まない。

であれば自社で物流施設を開発するというのが各社の流れであり、新築物件が近年マーケットに大量供給され、好調なマーケットがそれを順調に消化してきた。

一級建築士など開発の専門家の採用もこの2、3年各社が積極的に進め、不動産ファンドバブル時代に、ゼネコン、デベロッパーからファンド運用会社に転職をしたもののリーマンショック後退職を余儀なくされた人材の受け皿となった。

しかしながら物流マーケットには相当な過熱感があり、いつバブルが弾けるのかという第三の問題が浮上してきている。

WEBによる通販ビジネスの拡大、小売業の大型量販化という昨今のトレンドからすると、物流のセクターそのものが破たん、縮小する恐れはないものの、物流施設間の競争は確実に厳しくなり物件の選別が進むことは明らかで、物流ファンド運用会社各社の今後の重要な経営課題となっている。

『ファンドの復権が求人増を呼ぶ』

過去不動産ファンドは金融商品として投資家保護の観点から評価・制約を受けてきた。

2013年は、不動産ファンドの社会インフラ機能にスポットライトがあたり、大きく成長する年になると思われる。

不動産ファンド業界がオポチュニスティクからコアへとはっきりと舵を切る年とも言い換えることができる。

不動産ファンド業界の求人は不動産ファンドバブル時代を100とするとリーマンショック直後で10となり、現在は30くらいにまで持ち直した。

今後不動産ファンドの預り資産残高がコア投資を中心に大きく伸び、求人の数も年内には50の水準に戻るのではないかと推察される。
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