2019.05.28

第6回 不動産金融業界のキャリア~その変遷と未来(下)「現状にとらわれず、ビジョン持て」

【住宅新報 2019年(令和元年)5月28日号 第5面に掲載された弊社代表執筆記事を発行元の許可を得て転載しています】

発展途上の証券化

 不動産金融業界は日本における数少ない成長産業の一つであるにもかかわらず、昨今の不動産価格の高止まりなどから不動産取引が停滞し、その実感を持ちにくいと感じているプレーヤーも少なくないと思われる。しかし、不動産金融業界のキャリアを考える上で、しっかりとした業界ビジョンを持つことは必要不可欠だ。

 従前から日本の不動産金融業界は米国から約10年遅れていると言われている。日本のリート市場は現在10兆円単位。それに比して米国は100兆円単位であり一桁違う。 投資対象となるアセットも現在は、オフィス、住宅、ホテル、商業、物流に加えヘルスケア、再エネなどに広がりを見せているものの、米国は日本とは比べものにならないくらいアセットの幅が広い。トランクルーム、携帯基地局、政府関連施設、森林等、様々なアセットが投資対象となっている。日本にはまだまだ証券化の対象となっていないアセットが山のようにある。

 また、現在の日本が1000兆円以上の多額の借金を抱えているにもかかわらず国際信用力が高いのは、個人の金融資産がそれを大きく上回っているだけでなく、政府関連が保有する不動産だけでも簿価ベースで約700兆円あり、それを証券化するだけで国の借金の大半を返済できる可能性を秘めていることも一因なのではないかと考えられる。

 不動産金融業界で働くプレーヤーには現状にとらわれ過ぎず、業界ビジョンをしっかりと持った上で自分自身のキャリアを志高く見据えてほしい。加えてこれから不動産金融業界を目指す人たちにも業界の未来を信じて積極的に挑戦していただきたい。

世代間リレー

 最後に、黎明期に市場を立ち上げ市場の拡大に寄与してきたトッププレーヤーたちの一部が、いわゆる定年退職となる年齢層になる、または近づく時期を迎えている。

 実際、業界の有名トッププレーヤーが転職、起業などネクストキャリアに足を踏み出すケースが散見されるようになってきた。トッププレーヤーたちが新しいキャリアに一歩踏み出すことによって、その経験・ノウハウを不動産金融業界内外の違ったフィールドで生かすことができ、かつ後進たちにとっても新しいマネジメントポジションへの道が開かれる。社会人になったとき、既に不動産金融業界が存在していた次世代がこの業界に今後どう関わり発展させていくかということも興味深い。

 これからの不動産金融業界は、業界的にもキャリア的にも様々な可能性を秘めた非常に魅力的な成長産業であることは間違いない。私も不動産金融業界に特化した転職エージェントとして活動を始めて13年目になるが、一つの成長産業に人的側面から携わり続けるのはいつもエキサイティングで全く飽きることがない。私のキャリアも不動産金融業界と共にある。

 うめこうじ・まなぶ=89年九州大学法学部卒。住友建設(現三井住友建設)入社。法務、海外営業に従事。94年MBA取得。その後クリード、オランダ系再就職支援会社、人材会社などを経て06年に不動産金融・不動産ファンド業界に特化した転職エージェント、エムユーシーを設立。